この記事では、薬物動態におけるパラメータの一つである分布容積について、説明します。
薬学部で勉強していて、誰もが一度は疑問に思うのではないでしょうか。
「分布容積」って何?と。
私もそんな風に思う一人でした。
分布容積について調べたので、解説します。
分布容積とは?
分布容積は次のような式で表されるパラメータです。
分布容積を\(V\)、体内薬物量を\(X\)、血中薬物濃度を\(C\)としたときに、
$$ V = \frac{X}{C}$$
これが分布容積の定義です。
体内薬物量を血中の薬物濃度で割った値です。
単位は容積になります。(LとかmLとかですね。)
直感的には、薬物が体に入った時に薬物が存在する体液の体積を表していると考えるとよいかと思います。
ただ、実際の体積ではない、ということは注意してください。
式に立ち返ればわかると思いますが、血中濃度で割っています。組織に行きやすい薬物などは血中濃度が低くなりますので、分布容積が実際のヒトの体積よりも大きくなることもあります。
なぜ分布容積が必要なのか?
なぜ、分布容積という考え方が必要なのでしょうか。
分布容積は、体内の薬物量と血中薬物濃度を結びつける値だからです。
薬物動態学では体内の薬物の動きを血中濃度で追っていきます。
したがって、体内の薬物量に紐づけるために分布容積というパラメータが必要となってきます。
また、分布容積は消失速度定数\(k_{el}\)を考える時にも非常に便利です。
なぜなら、
$$ k_{el} = \frac{CL}{V}$$
という式が成り立つからです。(\(CL\)はクリアランス。)
もともと、消失速度定数\(k_{el}\)は単位時間当たりに血中薬物濃度の対数値がどれだけ低下するか、ということを示しています。
すなわち、時間\({t_{1}}\)から\({t_{2}}\)までの間に薬物濃度が\({C_{1}}\)から\({C_{2}}\)まで変化したとすると、
$$ k_{el} = \frac{lnC_{2}-lnC_{1}}{t_{2}-t_{1}}$$
このように表されます。
これが、先ほどの
$$ k_{el} = \frac{CL}{V}$$
のように表すことができるので、非常に明快な等式となります。
まとめ
今回は分布容積という考え方があると、なにかと都合がよく薬物動態が考えやすくなるため、というお話でした。
分布容積は体内の薬物量を血中薬物濃度で割る、というところが今回のポイントです。(定義なので当たり前ですが。)
コメント